• 2017.8.15
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「山の会」たより49

平成29年7月30日(日)~8月2日(水)長野県・岐阜県 槍ヶ岳(3180m)

☆ 2017年夏季遠征登山は7月30日から8月2日3泊4日で名峰「槍ヶ岳」を計画した。
<第1日目 7月30日(日曜日)>
○ 博多駅から06:08東京行き始発のぞみ2号に乗車、期待と不安を胸に抱きながら、いよいよ始まる槍ヶ岳登山である。天気は曇り時々雨の予報で残念な気持ちもあるが、登る31日はなんとか雨に遭わないように祈るだけである。定刻に名古屋に到着、ここから高山本線9:39発ひだ5号に乗り換えた。
○ 高山本線は名古屋から岐阜までは座席の後ろ向きに進むが、岐阜で切り替えられ前向き進んでいった。「ワドビューひだ5号」は名前のとおり窓が広く、座席の床がが少し高くなっており見晴らしの良い車両である。
 高山本線は木曽川から分かれた飛騨川に沿ってに進み、飛水峡、下呂温泉などを経て高山、富山を結んでいる。途中、犬山城が見える。その後は飛騨川の景観を楽しみながら、有名な下呂温泉など高度を上げながら進んでいった。
 
○ 都会的な風景になり12:23高山駅に到着した。高山駅は立派な駅舎で建替中みたいである。予約していたジャンボタクシーに乗り、いよいよ上高地に向かうことになった。高山市内を通りすがりに見ただけでも、古い町並みの観光地となっているようである。
○ だんだんと山深くなってきた。岐阜県から安房トンネルを通り長野県へ、そして大正池、上高地帝国ホテル前を過ぎて13:55上高地バスターミナルに到着した。ターミナルでは帰りのバスを多くの人が整理券を持ち並んで待っている。また広場にもたくさんの観光客や登山者がベンチに座っている。
 
○ 曇っているが雨の心配はなさそうである。‟さあ徳澤園まで出発だ!!” 梓川沿いのほぼフラットな道を約20分で観光名所「河童橋」着いた。大勢の人がいる。どちらかと言えば観光客が多く賑わっている。川岸にも子どもたちが下りて水遊びをしていた。残念ながら、河童橋から穂高連峰は雲に隠れて見えない。
 
○ 明神3km、徳澤園6.5kmの標識がある。道もほぼフラットである。路肩にはぽつぽつと高山植物の花が咲いていた。梓川は登山道の横をざぁー、ざぁーと流れ、たまに涼しい風を送ってくれる。 15:17明神館に到着し、最終日宿泊するので荷物を預けた。
○ 約50分要して、16:07徳澤園到着。やっとビールが・・・・・・・徳澤園は山岳小説「氷壁」の宿として有名であるが、カプセルホテルのような間仕切り以外は温泉もあり、食事もほとんどホテル並みである。温泉で汗を流し、夕食時間まで外のベンチで高原の爽やかな風の中、早速ビール、焼酎で疲れを癒した。夕食の後は酒のおかげもあり、すぐに就寝となった。
 
 
<第2日目 7月31日(月曜日)>
○ いよいよ槍ヶ岳登山の日となった。路程10時間、考えただけでも大変である。05:00徳澤園を後にした。先ず目指すポイント「横尾」である。新村橋を過ぎた頃から山には朝焼けが輝いてみえる。川面は靄が立ち始め、だんだんと幻想の世界となる。川幅が狭くなった分、水の流れが早くなった気がする。
○ 06:11「横尾」に到着、横尾は涸沢との分岐にあたり涸沢、穂高方面には横尾大橋を渡っていく。ここで、朝食を取った後、横尾を出発した。この頃はメンバー全員が挑戦者の顔つきで元気である。やや登山道らしくなってきた。
 一の俣、二の俣と支流に架かっている橋を渡る。川はだんだんと荒々しい流れと音になってきた。そして、登山道が川岸に接した場所では、川に手足を浸ければ、”どんなに気持ちが良いだろう”と思いながら進んでいく。横尾から約1時間30分くらいの所に「もうすぐ槍沢ロッジ がんばって!!」と書かれた板が岩の上にある。
 
 
○ 7:59「槍沢ロッジ」に到着、このコースの最後のロッジであるが、そのままスルーして進んだ。しばらく進むと最初の雪渓でやや慎重に歩いた。渡り終えると直ぐに山桜が咲いている。この時期、絶対に九州では見られない。
○ 08:57「ババ平キャンプ場」に到着、周りの山々が青空のなか眼前にひろがり、アルプスらしさを感じる。最後のトイレ休憩を取って、いよいよ長丁場に向かった。この頃「槍ヶ岳山荘」から下山している人達と良くすれ違うようになってきた。我々と違って元気が良く、”頑張って!‟と声かけられても弱々しい返事しかできない。
 9:32「大曲」到着、ここから左に折れる。前面の山肌に幾筋もの雪渓が見えてきた。しばらく進むと本格的に雪渓を進むことになった。登山道はだんだん急になって、登るスピードが落ちてくる。ときおり雪渓を通り抜けた風が涼しく和まされるが、快晴の(紫外線たっぷり)日差しは強い。
 
○ 11:01「天狗原分岐」に着き、振り返ると”よくぞここまで登ってきたものだ”と自分をほめてやりたい気分、しかしまだ6時間弱、まだ遠い!!天狗原は天狗池に映る「逆さ槍」が有名である。しかし往復に1時間30分要するとのことであきらめる。更に約40分ほどで、ようやく最後の水場に到着、先に休憩していた人から手を出すように言われ、出すと水場の水をかけてくれた。その冷たさは尋常ではない。少し広くなったところで昼食をとることにした。
 昼食を終えてまた登り始めた。食後の登りは脚が重く、だるくて、一歩一歩が非常につらい。雪渓を慎重に横切ると、そこに「槍の穂」が・・・・・初めて見る槍の穂は感慨深い。ここまで登ってきた人しか味わえない。つらさを忘れる一瞬である。みんな元気が出たような気がする。雪渓の白、ハイマツの緑、空の青と記念に残る構図である。
 
 
○ 「坊主下岩屋下」分岐から石ゴロゴロの登山道に変わった。かなりの勾配である。見上げると槍の穂の横に小さく「槍ヶ岳山荘」が見えてきた。”あと少し、あと少し”と自分で号令掛けながら登る。小刻みに立ち止まりながらも、最初に槍ヶ岳に登った「念仏行者 播隆」が登山の度に使ったと言われる岩屋「播隆窟」にたどり着いた。
○ この疲れの息抜きに、ふと振り返ると照らされた「常念岳」のフォルムがすばらしく美しい。しばらく行くと「殺生分岐」の標識、槍ヶ岳1kmとなっている。この1kmが10kmに匹敵するくらい感じられるのがこの後である。
急峻な岩道で一瞬たりとも気が抜けない。高度のせいもあるかもしれないが心臓が煽る。20歩ぐらいで立ち止まりながら登ることを、続けながら進む。岩に描かれた100mの距離が恨めしいくらい遠い。
 
 
○ 槍ヶ岳の穂の先がだんだん大きく見え始めると、岩にへばりついた登山者が縦列になって、山頂には多くの人が見える。”ヘトヘトへ”になりながらも播隆窟から1時間30分強、14:47今日の宿泊「槍ヶ岳山荘」にやっと到着した。9時間48分の路程であった。 槍ヶ岳山荘には平日にもかかわらず、たくさんの人がデッキで景色を眺めている。
 まず槍ヶ岳山荘でチェックイン、部屋に荷物を置き身軽にして、「槍の穂」登頂に向かうことにした。安全のため事務所でヘルメットを500円で借りて、15:22登頂に挑んだ。
 高所恐怖症で内心は怖いなと思いながらも、せっかく来たのだから、みんな登っているのだからと奮い立たせ徐々に岩に取り付き登っていった。”決して下を見ない。3点確保”を自ら語りかけながら、くさり場、直立ハシゴ乗り切り15:50槍ヶ岳山頂に立った。
 
 
○ 山頂は20㎡ぐらいの広さで、先端に祠が建立されている。さすがに3180m,日本で5番目の山である。ときたま切れる雲間から北アルプス山々が一望できる。
怖いながらも祠の傍で一人一人の写真と集合写真を撮り、約6分ぐらいで下山となった。登りと同じように下を見ないように岩ばかりをみながら・・・・怖いながらも途中でほぼ真下に見える槍ヶ岳山荘の写真を撮った。16:29やっとの思いで無事山小屋に着いた。途中で何回かヘルメットに岩がぶつかったが、痛い思いをせずに済んだ。500円は痛さを考えたら安かったかもしれない。
 
○ 17:00夕食となった。ビールで乾杯したあと焼酎を飲む頃になると、第2便の食事の準備が始まりそうだったので早めに切り上げた。宿泊客も一堂に会するとたくさんいる。しかし30日の宿泊客は倍はいたそうである。男性陣は食事後も飲み足りない気分で外のベンチに陣取ってペット焼酎を開けながら夕焼けの山並みを堪能して過ごした。
○ 中国人の登山客に加え、急に韓国語の世界となった。ツワーと思われる2、30人が登ってきた。それも体力の違いからかバラバラである。外国人にも魅力ある山なのであろう。さすがに3000mを超す高度になると、15°程度になって肌寒くなってくる。18:40部屋に帰って就寝、よく歩いた!!
<第3日目 8月1日(月曜日)>
○ 今日は下山の日である。天気は曇り、一時雨、雷と本当であれば最悪である。4時前に起床して下山の準備に取りかかった。外を見るとガスがかかって槍の穂もよく見えない。05:02下山を開始した。かなり急な斜面である(登りがきつかったはず!!)。最初は薄暗かったが下るにしたがい高山植物のお花畑が見え始めた。登りは写真を撮る余裕がなかったので、下りはできるだけ撮ろうと立ち止まり、立ち止まりながら花を撮りながら下りていった。
 下山は体力的にはそんなにきつくないが、精神的には転ばないようにと張りつめた状態が続いていく。殺生分岐、坊主岩屋下を過ぎ、06:40水沢に着いた。ここで休憩して朝食となった。
  
 
○ 天狗原分岐を過ぎた頃から出会う人がだんだん多くなってきた。ちょうど槍沢ロッジから登ってきた人達ではないかと推測される。雪渓でも登山者、下山者がすれ違っている。火曜日なのに登る人が本当に多い。
雪渓ともお別れである。この頃から雨がぱらついてきたので、雨具を取り出す人もいたが、我々は少し様子を見ることとして進んだ。大曲からは木立に覆われた登山道を下っていった。雨は止んだようだ。09:31槍沢ロッジに到着、ここまで4時間30分を要した。
○ 槍沢ロッジを出発してしばらく進むと、登山道は梓川の源流に沿い始めた。川幅も狭く、流れも急である。川石は白く光って、どこまでも透明な流れである。川に下りて流れに手を浸けたりして、一時の涼感を楽しんだりしてした。二の俣、一の俣と進んで行くと、突然”キキキ”という鳴き声、よく見ると前方の木立に今回初めて見る「猿」がいた。よく見ると川を集団で移動しているようである。
 

 

○ 11:32横尾に着いた。昼食のため横尾山荘の食堂に入り、カレー、ラーメン、スタミナ豚丼などを食べた。約50分ぐらいの昼食休憩ののち,12:21第1泊目の徳澤園を経由して明神館に向かった。あと2時間程度の歩行である。13:33徳澤園に到着、みんなでソフトクリームを食べようと言うことで、400円のソフトクリームに舌鼓、「疲れた身体にソフトクリームはよく合う」最後のポイント「明神館」に向かった。基本下りと思っていたが所々に登りがあり、下り脚には少しの登りも堪える。
○ 14:39「上高地 明神館」にやっと到着、今日の道のりは9時間36分であった。明神館に早速チェックイン、預けていた着替えなどを受取り部屋に案内された。部屋は畳で山小屋とは違う!、早速荷物を解いて温泉(?)へ、さっぱりしたところで夕食18:00までかなり時間がある。そこで、ペット焼酎を抱えて外のベンチで女性陣も参入してプレ慰労会の開始となった。
 
 
 この時間でも登っていく人がかなりいる。おそらく徳澤園か横尾山荘に泊まるのであろう。楽しく談笑していたら「サルの集団」が座っているベンチの傍を歩いていく。親猿、子猿などが草木の花芽などを食べながら移動していった。
○ 食事の途中でご主人が旅館背後にある明神岳の説明があり、朝焼けが非常にきれいとのこと。また、明神池が06:00から祝詞があがる等であった。
<第4日目 8月2日(水曜日)>
○ 槍ヶ岳登山も終わり、帰福の日となった。04:30頃起床して、前夜ご主人が行っていた朝焼けの明神岳を見るために外に出た。ひんやりと寒い、でも爽やか、とても福岡では考えられない気温である。05:00過ぎから明神岳に日が差してきた。徐々に朝焼けが進んでいく。富士山以来の久々の感動する山の朝焼けである。
 
○ 07:00の朝食前に明神池を散策することとした。明神橋を渡り梓川沿いに少し行くと明神池、穂高神社奥宮の案内があった。明神池の手前に明治時代の山岳ガイドとして有名な上條嘉門次が立てた「嘉門次小屋」があり、現在も宿泊施設となっている。太鼓橋を渡るとそこに神社、奥に明神池がある。06:00に祝詞があがり、明神池が開かれた。
  明神池は穂高連峰の伏流水や湧水が蓄えられている。一之池と二之池があり、一之池は早朝日差しとともに霧が立ち幽玄の世界を醸し出す。池面に映る明神岳、木立、池の岩が観光パンフレットと同じである。二之池は日本庭園のような趣がある。朝の観光を堪能して再び明神館に戻った。
 
 
○ ご主人から写真を撮ってもらい、07:30上高地のバスセンターまで歩き始めた。帰りは明神橋を渡って梓川右岸遊歩道経由で上高地までいくことにした。
○ 梓川右岸は左岸に比べ少し時間はかかるが、木立に覆われて木道も整備され、非常に歩きやすい。また、明神池、明神岳から流れ出た透き通った水が幾つものせせらぎとなって遊歩道を横切り、梓川に注いでいる。
途中、賽の河原に見立てたようにケルンをいくつも積み上げていた。また、遠方には焼岳も見えている。そのまましばらく進むと樹林帯の道が開けて明るくなり梓川が分流したあたりの湿地帯の木道の横に広い板張りの展望台がありそこから六百山を展望する。板張りの展望台の直ぐ下に鴨の親子が気持ちよさそうに泳いでいた。この辺りで遊歩道を歩いてくる観光客とちょくちょく出会った。
 
○ 絶景の宿「白樺荘」の前にある展望台で往きには見られなかった絶景の穂高連峰に目の当たりにした。「なんもいえねぇ」と言う言葉がピッタリである。
少し歩くと河童橋である。いきなり、戸惑いを感じるほどの多くの観光客がいる。休憩して上高地バスターミナルに向かった。
○ 09:30予約していたジャンボタクシーに乗り込み高山駅に向かった。途中、「大正池」に立ち寄った。エメラルドグリーンの大正池と樹林帯、穂高連峰、そして青空、河童橋から見る穂高と趣がかなり違ってくる。また、左手には焼岳が迫っている。
 
○ 約1時間強で高山市内まで戻ってきた。帰りの「ひだ10号」の発車時間まで約2時間あるので、昼食をかねて板塀や白壁で統一され、古い町並みを表現している市内を巡った。昼食は運転手お薦めの蕎麦処「みやび庵」の鴨せいろ、トマト蕎麦等を注文した。最初に蕎麦を塩で食べるように勧められ、食べてみると”なかなか?”であった。
○ ゆっくりと市内散策、買い物をしていたら時間が経つのが早い、12:00を過ぎてしまったのであわてて高山駅に向かった。
○ 高山駅から定刻12:33ひだ10号が発車、名古屋経由で博多には10分ぐらい遅れの18:43到着した。無事に帰福して槍ヶ岳登山を終えた。
 ※ 槍ヶ岳登山は予想外の絶好の登山日和となった。遠くの山々から槍の穂を眺めていたものの、目の前で見る実際の槍ヶ岳の雄姿のすばらしさ、槍の穂を登り切った達成感、そして約10時間に及ぶ登りに耐えた体力、自分の自信を深めた登山であった。 何よりもメンバーが怪我もなく無事登れたことが良かった。登山者があこがれる槍ヶ岳は一生の思い出になった。
※ 山の日の8月11日(金)19:30からNHK「北アルプス ドローンで大縦走」で槍ヶ岳、上高地などが放送されたが、登った山を映像で改めてみると何となくうれしい気持ちになった。

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